第2回IT×災害会議レポート

「IT×災害」会議の第2回は2014年10月4日に行われました。

2013年の第1回目の会議以降、いくつかのプロジェクトが立ち上がりました。また、東日本大震災以降も雪害や水害など多くの自然災害が日本を襲っており、それらに対してのITからの関わりを考える機会も多くありました。そこで第2回目のテーマは、実際に動き出そうという意味を込めて「つながり×動く」としました。

午前中のショートスピーチ

会議の午前中は10名の方から「IT×災害コミュニティに期待すること」、「現在進めているプロジェクトの紹介」、「支援活動を通じて見えてきたこと」など、多岐にわたるテーマでショートスピーチを行っていただきました。登壇された方(敬称略)とその概要は次の通りです。

東京大学 CSISとしての東日本大震災以降の取り組み ~地理空間情報と復興・防災・減災

古橋 大地・瀬戸 寿一 東京大学空間情報科学研究センター

「東日本大震災以降、地理空間情報がどうやって世の中の役に立てるかという観点で、復興支援アーカイブ、NHK震災ビッグデータ、アーバンデータチャレンジなどに取り組んできました。世の中を今よりももっとよくするために、地理空間情報を必要とするすべてのコミュニティを応援します!」

情報支援レスキュー隊 IT DART の活動

佐藤 大 IT DART

「現地に入って被災地の状況を把握し、後方支援チームと連携して被災地の外にいる支援を考える団体が動きやすくなるよう情報発信をしていくのがIT DARTの活動の目的です。災害後100時間の緊急活動の中で被害や避難の状況、支援ニーズ、各支援団体の現状などを収集します。」

支援者のための情報発信 〜平時、災害時の痛み悲しみを減らすために情報ができること

小和田 香 IT×災害情報発信チーム

「誰のための情報を届けるかということが大切。自分たちは支援者のための情報を届けるために活動を始めました。IT×災害情報発信については災害時に信頼性あるメディアから情報を収集、発信します。災害時自治体Twitter調査が2014/9の NHK NEWSWEB で紹介されました。各地域のキーマンをつなぐこともやっていきたい。」

災害時におけるIT支援活動の成果と課題-調布、大島、前橋、広島での事例

柴田 哲史 UDコンサルティング 代表取締役社長/災害IT支援ネットワーク

「被災地の災害ボランティアセンターに入って、ウェブサイト作成支援などを行ってきました。直近では広島の災害でも活動しました。公式サイトを公開すると問い合わせの電話の数が激減(3-4割)します。電話の問合せ内容はだいたい決まってるので、FAQの効果が大きい。」

大槌における支援活動を通じて感じたこと

臼澤 良一 遠野まごころネット

「被災地では雇用の喪失、高齢化、コミュニティ不全、農業漁業の衰退、インフラの不備などの問題があります。きめ細やかな支援には、他の地域の事例ではなく現地に入り被災地の声に耳を傾け、その地域に息づいているものを掘り起こすことが重要です。」

震災対策アプリ: ホイッスル on Android − 小さなコード,大きな成果

安川 要平 ヤスラボ代表

「震災直後にホイッスル on Androidという震災対策アプリを開発しました。生存確率を上げるためにあなたに代わってSOSを発信するアプリです。笛はあると良いけどみんな持ってない、持っているものに笛が付けばというところから着想し、30行という短いコードで実現しているのですが30万という数のダウンロードがありました。要望はいろいろと頂くのですが、シンプルさを心がけてきました。」

災害時に生き残るための知識を共有できるサービス

中塩 成海 一般社団法人イトナブ石巻 理事

「石巻で被災した実体験から災害時に生き残るための知識を共有できるサービスを開発しました。災害発生時は少なくとも1週間は自分で生き抜かなくてはいけない。そのようなサバイバルする災害時に必要な情報を被災前から考えられる場を提供し、被災時に速やかに共有します。Race for Resilienceからスタートしたプロジェクトで、ネットが止まっても印刷物を提供・拡散するようなものを考えていきたい。」

すごい災害訓練DECOの紹介

田口 空一郎 すごい災害訓練DECO

「災害対策には人材育成が最も重要で、自助のためのコーチングの仕組みで目標に近づけていく仕組みです。311の災害経験をどのように継承していくか、防災教育プログラムの開発を考えていたことがきっかけでした。iPadを使った災害対応訓練などを実践しています。」

災害の経験から得た、災害発生時に備えた虎の巻

津田 恭平 一般社団法人イトナブ石巻 理事

「『まさかここまで津波がくるとは思わなかった』という実体験から万人が知識を持つことが防波堤を作ることよりも重要と考え、危険度を認識してもらうためにRace for ResilienceでFloodARというアプリを開発しました。ARアプリ上のアバターと同じ速度で歩くことで実際の避難にかかる時間を実感出来るようになっています。」

Code For Japan Summitでの防災・減災ハッカソンへの誘い

及川 卓也 Hack For Japan

昼食

今回は「模擬の炊き出しの体験」としてパックの弁当となめこ汁が提供されました。昼食を担当いただいたいのは、小林幸生さん(NPO連携福島復興支援センター)です。なめこ汁とそこに入れるネギはいわき市産のものを使っており、大きさと香り高い美味しさが好評でした

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午後のアンカンファレンス

参加者に「自分が議論したい」と思うトピックを付箋紙に記入して頂き、それを整理した結果、アンカンファレンスの時間割は次のようになりました。

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13:15~ IT DART オープンデータ・官ができること 災害時発信 マイノリティ 災害ボランティア
14:05~ IT DART 2 連携 お金・持続可能性 防災教育 コミュニティ運営
14:55~ ツール 産業復興 人材教育

アンカンファレンスは「発表者とそれを聞く人」という形ではなく、参加者自ら議事進行や議事録作成者、発表者を決め、時間内にまとめていきます。こういったやり方は初めてという方でもスタッフや昨年の参加者などにリードされ、すぐに馴染んで頂けたようです。

アンカンファレンスを終えた後、その成果を各チームから発表してもらいました。

オープンデータ・官ができること

データを使って災害の経験をどのように伝承していくかを議論し、何をオープンにしていくか、どのようにオープンにしていくかといった観点で、データ形式の大切さやその運用の必要性を訴えました。

災害時情報発信

情報発信の観点を誰に(Who)いつ(When)どんな情報(What)をどうやって(How)届けるかを軸に議論し、被災地域とそれ以外の地域や受け手の情報感度などの分類を行って、被災地からの生の情報発信が重要になるのではないかという仮説を立てました。

マイノリティ・ハンディキャップ

外国人や障害のある人ような要援護者に対してどのような支援ができるかを議論し、要擁護者に対する情報の受発信や、情報を受け取った後の行動に結びつけるためのリテラシー格差を埋めるため、予防的な情報の整理や事前の情報公開を平常時に実施していくという施策を発表しました。

災害ボランティア

被災地外からボランティアに関わる人々に求められる意識付けを行うために、ボランティアを運営する側としてもその部分を予め明示しておく必要性を訴えました。

連携

災害発生時の活動として本質的ではないところで発生する問題を回避するために、災害時の協定を事前に結んでおくことなど事前の策を中心とした議論でした。

お金・持続可能性

災害時の資金運営のワーキンググループを立ち上げたことの発表がありました。

防災教育

浦安市で防災教育コンテンツを作った「すごい防災訓練DECO」を例に地域毎の特性に配慮した教育の必要性を説きました。

コミュニティ運営

誰かがいつも必ず居て「集まる・共有する・共感する」ことができる場の用意や、行政任せではなく自分達自身で災害に備えるためにコミュニティを作り上げていく必要を訴えました。

産業復興

被災地における産業復興について議論し、既存産業の復興をプロボノの協力を得ながら実現していく案と、新規産業の育成をシリコンバレーのような企業が生まれ易い文化を作っていくために大学と連携していくスキーム作りの案という2つの提案がありました。

人材育成

ITに関する教育について議論し、小さくても良いからアウトプットを出すことや、達成するべき目標を可視化することの大切さ、メンターを用意することの重要性を訴えました。

ツール

情報の集積、その分析、そして可視化を軸に議論し、被災者の状況にあった判断材料をレコメンデーションしていく仕組みと、平時の情報蓄積と災害時の差分を見る仕組みが発表されました。

IT DART

情報支援レスキュー隊としての取り組みの振り返りと今後のアクションプランの策定をテーマに議論し、情報の整理や構造化をするためのテンプレート作りのみならず、そのUIとUXまで踏み込んだものにしなければ、本来目的とするところを実現できないという課題意識から、情報の整理に向けての活動や支援を行っていくという包括的なものが発表されました。

第2回を終えて

最後のクロージングでは、『去年は「IT×つなげる」、今年は「IT×つながりx動く」ということをテーマにしてきました。来年は「IT×つながり×動く×広げる」として開催できればと思います』という話で締めくくられました。

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